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かつら美容師として生きて

shiho


本年2月12日に永眠された福本志穂さん(31歳)。
この原稿は月間「致知」3月号に掲載されたものです。
私たち日本ヘアエピテーゼ協会は、彼女の遺志を引き継ぎ、おなじ境遇の仲間とともに今日もお客様と向き合っています。


ローザ・シュライフェ。私の運営する美容室は、ピンクのリボンを意味
するこのドイツ語をお店の名として掲げています。
2年半前、京都の自
宅を改装して始めたこの美容室は、口コミでお客様の輪が広がり、いま
では遠く沖縄から足を運んでくださる方までいらっしゃいます。


ピンクリボンは、乳がんの早期発見を促し、撲滅を目指す啓発運動のシ
ンボルマークです。お店には、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてしま
った方が全国から相談に来られ、私は通常の理美容だけでなく、持参さ
れたカツラのカットも承っています。人工の毛はどうしても違和感があ
るため、そこにハサミを入れて自然に、おしゃれに仕上げ、外に出る勇
気を取り戻すお手伝いをしているのです。


大切な体に手術の痕跡が残る上に、髪が抜けてしまうことは、女性にと
っては大変なショックです。人目が気になり、殻に閉じこもってしまう
方も少なくありません。

実は私も、3年前に乳がんを発病しました。薬の副作用で初めて髪が抜
けた時はとても惨めで、鏡を見るたびに泣いていました。それだけに、
カツラのカットを通じて皆さんの心の殻を破り、少しでも前向きな気持
ちを取り戻していただきたいのです。


カットの最中に、それまで抱えていた悩みを打ち明けて涙を流される方
もいらっしゃいます。「髪形を変えることができて嬉(うれ)しい」「こ
れでまた職場に復帰できる」と笑顔でお店を後にされることが、何より
私の生きるパワーになっています。一生続くといわれた治療も、いまで
は生きていく一部として、プラスに受け止められるようになりました。


私はもともと美容師にあこがれていたわけではありません。高校時代に
父親の商売が傾き、別れて暮らすことになった両親を何とか元に戻した
い、そのために手に職を付けたいと考えてこの道に入ったのです。

美容の仕事はとてもハードですが、早く一人前になりたい一心で、ひた
すら前を見て頑張りました。よいオーナーにも恵まれ、3年でひと通り
の技術を身につけた後、いくつかのお店で修業を積みました。
幸いにも
家族はその間に再び一緒になることができ、私は職場で出会った男性と
結婚。いずれ二人でお店を持ちたいと考えて、子育て中も美容の仕事を
続けていました。

体に異変が生じたのはその頃でした。疲れが酷(ひど)く、肩の凝りや、
腰痛からくる足の痺(しび)れがいつまでもとれないのです。知り合いの
紹介で鍼(はり)治療を試みましたが、一向によくならず、逆に体はどん
どん痩(や)せ、腰の痛みが酷くてとうとう歩けなくなってしまいました。

母に促されて病院で検査をうけると、乳がんの細胞が検出されました。
腰の痛みはそれが転移したためだろうとのこと、28歳の冬でした。

がん? 転移? 思いもよらない告知に、頭の中は真っ白になりました。
あぁ私はもう死ぬんだ。あと何か月だろう――そんな思いだけが頭の中
を巡りました。

家族を取り戻した、結婚して新しい家を買った、子どもにも恵まれた、
さぁこれからという時に、これでは家族がまた潰(つぶ)れるかもしれな
い。なぜ、いったいどうすれば……。いくら考えても答えは出ません。
結局、自分が何とか生き続けるしかないのです。

気がかりだったのは夫のことでした。二つ年下で当時はまだ26歳。こ
れから人生を開いていく夫の負担になりたくないいっそ別々に歩んだほ
うがいいのでは、と真剣に悩みました。




「一緒に頑張ればいいだろう」



夫は当たり前のようにそう言ってくれました。
彼は、私の髪が抜けると
告げられた時も、自分から先に頭を丸めてきて笑わせ、ショックをやわ
らげてくれました。夫が医者から、私の余命があと半年と聞かされてい
たと知ったのは、ずっと後でした。そのことをおくびにも出さずに支え
続けてくれた夫。あぁ、自分は一人じゃないんだ。夫の存在が、どれほ
ど生きる力になったことでしょう。


初めてカツラを買った時は、何度もハサミを入れ、ようやく納得できる
形にすることができました。それをつけて病院へ行ったところ、待合室
の患者さんから声をかけられ、ぜひ自分のカツラもお願いしたいと頼ま
れました。噂(うわさ)が広まって病院に行くたびに頼まれるようになり、
それがきっかけでいまの美容室を始めることになったのです。

お店で出会ったお客様から、私は生きるパワーをたくさんいただきまし
た。人は一人では生きられないことを、いまはつくづく実感しています。
その思いから乳がんの患者会を主宰し、この美容室に皆さんをお招きし
てお互いの体験を分かち合っています。
がんになった、髪が抜けたから
といって決して人生を諦(あきら)めてはいけない。お互いに支え合って、
前向きに人生を歩いていきたいのです。

そんな思いを人に伝えるのは、自分がいきているいま、この時だけです。
以前の私は、明日がくるのを当たり前と思っていました。しかし病気に
なってからは、将来に夢を描くことや、明日のことをあれこれ考えるこ
とがなくなりました。元気に生きているいまを大切にして、精いっぱい
楽しみたい。その思いで、私はきょうもお客様と向き合っています。

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好評です!

newH

ロングヘア対応のあたらしいヘアエピテーゼができました。
そのまま被れば写真のように。肩位置でカットすれば素敵なボブが楽しめます。すでに入荷同時に品薄状態。あっというまにオーダーが続々と入ってしまいました。

ちょっと見てみたい、被ってみたいという方は各サロンの方へお越しください。

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